色彩文様研究所

花菱・幸菱

花菱・幸菱

御利益

を菱形にしたものを指し、花菱を繋いだものは菱形の先が合うので「先合い菱=幸菱」と呼ばれた。[1]

菱形 の中に四弁の唐花を配し、四辺に四角の切り込みを入れた文様。また、それを組み合わせたものを言い、「幸菱(さいわいびし)」とも。なお、花柄を菱形にかたどった文様もあり、「菱椿」「菱牡丹」などと言う。唐花については「唐花菱」とも「唐菱」とも言う。
「幸菱」は「さきあい(先合・先間)菱」から出た語。
「武田菱」のことを「幸菱」「花菱」と呼ぶことがある。[2]

菱形 の中に、それに適合するよう四弁の花形を入れた文様で有職文様の一つである。[3]

文様の「淡紅地幸菱文固綾」
淡紅地幸菱文固綾
阿須賀神社
文様の「花菱」
花菱
文様の「亀甲花菱」
亀甲花菱

文献等の用例

  • 浮世草子・日本永代蔵 – 三・五「花菱(ハナヒシ)の大紋に家名をしらせ」(1688)
  • 浄瑠璃・本朝二十四孝 – 一「花菱は武田の印」(1766)
  • りんきの独楽(百花園 – 一八巻一七七号所収)「独楽(こま)が三つ<略>花菱の紋が着いて居るのが是れのだよ」(1896)
  • 老年<芥川龍之介>「七宝に花菱(ハナビシ)の紋が抉(ゑぐ)ってある、華奢な桐の見台にも」(1914)
  • 俳諧・毛吹草 – 五「きてや見んさいはいびしの水のあや<休音>」(1638)
  • 浮世草子・万の文反古 – 二・一「所わきのさいはい菱(ヒシ)の袷地なしの綸子小袖」(1696)
  • 浄瑠璃・曾我扇八景 – 上「先汝が定紋、幸びし武田党に紛らはし」(1706)
  • 浄瑠璃・信州川中島合戦 – 道行「たなびき渡る雲の白旗幸びし、あれこそ父よ、武田の紋」(1721)
  • 随筆・貞丈雑記 – 三「婚礼の時よめ君の衣裳は上着にさいわゐびしを織たる白き綾を着る也」(1784)

脚注

  1. ^ 『日本・中国の文様事典』視覚デザイン研究所 2000年
  2. ^ 『文様の手帖』小学館 1987年
  3. ^ 岡登貞治『新装普及版 文様の事典』東京堂出版 1989年