色彩文様研究所

薔薇文

薔薇文

御利益諸願成就 災難厄除 病気平癒

薔薇 は、ギリシャ神話で美と愛の象徴とされ、西洋ではさまざまな装飾に用いられてきた。そのため、西洋の植物として認識されがちであるが、「さうび」の名で『古今和歌集(こきんわかしゅう)』の歌に詠まれたり、『枕草子(まくらのそうし)』(能因本)にも書かれている。これらは、中国原産の庚申薔薇(こうしんばら)で、長春花ともいわれるものとされる。
日本では、文様としては鎌倉時代の蒔絵や室町時代の水干(すいかん)にみることができるが、おもに鑑賞用の植物であった。江戸時代、元禄年間(1666〜1704)に一般に栽培されるようになり新種が日本に伝来しはじめると、鍋島藩主に代表されるような新しいものに敏感な人びとによってようやく文様としても普及するようになった。[1]

越後系 の型染に多く用いられる文様で、八重の長春から着想したものであろう、四季を通じて花を開くという長春は、雪の多い新潟県人の一つの願いともいうべきものを託したのであろう。[2]

文様の「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」
浮線綾螺鈿蒔絵手箱
サントリー美術館蔵
文様の「色絵桜薔薇文大盤」
色絵桜薔薇文大盤
東京藝術大学蔵

文献等の用例


脚注

  1. ^ 並木誠士『すぐわかる 日本の伝統文様』東京美術 2006年
  2. ^ 岡登貞治『新装普及版 文様の事典』東京堂出版 1989年