色彩文様研究所
春草文
2020年12月3日
春草文
御利益ー
春に咲く 草花を取り合わせた文様を春草文という。数ある春草のなかでもよく用いられるのは、蒲公英(たんぽぽ)、菫(すみれ)、蕨(わらび)、土筆(つくし)、菜の花といった、野原のどこででも目にするような草花である。
絵巻や襖絵などの室町時代の絵画には、蒲公英と菫の組み合わせが点景としてしばしば描かれている。他の季節の草花を組み合わせて、四季草花図とする場合もある。そのほか、ピンクの躑躅(つつじ)や黄色い山吹など春の代表的な花木と草花を組み合わせることもある。いずれも、季節感を前面に押し出した文様である。
本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)、尾形光琳・乾山(おがたこうりん・けんざん)ら琳派(りんぱ)の絵師たちは、春草をしばしば題材にするが、そのなかには一種類の野の花だけを扇子や団扇、向付(むこうづけ)に大胆に描いたものもある。[1]
春の草花 をとりまぜて文様とするものである。それらの中、最も多く用いられるのは蒲公英(たんぽぽ)・菫(すみれ)・蕨(わらび)・菜の花・土筆(つくし)・菘(なずな)・清白(すずしろ)・仏の座(ほとけのざ)である。江戸時代の名工尾形乾山は好んで春草を陶器の文様に用いた。「春草文葢茶碗」はその一例で、極めて無造作に蕨・菫・土筆などを呉須(ごず)染付で描いている。春の野の情緒が十分に感じられる。[2]