色彩文様研究所
宝相華文
宝相華文
御利益未来永劫 極楽浄土
宝相華 は、ササン朝ペルシャ伝来の花文を基礎に、中国の唐代に、神仙世界や仏教の極楽浄土、空想の楽園に咲く花という概念が組み込まれ、新たな花の文様として形成された。実際に存在する一種類の花を手本とするのではなく、牡丹や蓮、石榴(ざくろ)など、さまざまな花の美しい部分を組み合わせて構成されている。
日本へはやはり仏教とともに伝来したため、経箱(きょうばこ)や華籠(けこ)など仏教用具の装飾文様として伝わり、定着していった。このような日本の宝相華文は、正倉院宝物に多くみられる。特定のかたちは決まっておらず、花や葉のかたちも多様であるが、時代とともに変化がみられる。中心となる花の周囲を葉や蔓(つる)で円形状に囲んだものが典型的な形態である。また、宝相華唐草といい、宝相華の周りに唐草など蔓状の植物を配して連続文様とすることも多い。[1]
宝相華 は特定の花があるのではなく、牡丹・シャクナゲ・芙蓉などの花の美しい部分だけを取り出して作った空想の花である。仏教装飾に使われるが、本来は西方のペルシア的な感性の中で生み出されたもので、中国から日本へ国によって、また時代によって、次々と変化する不思議な花である。[2]
唐草文様 の一種。想像上の多弁花の植物をかたどったもの。唐花と共通する要素を持つが中国唐代やわが国の奈良・平安時代頃、多く仏教において装飾的文様としてさかんに用いられた。[3]
花 の文様で、インドに発した一種の花文様が、西域から中国を経てわが国に伝ったものである。その初め実在の花があってそれによったものか、あるいは最初から想像によって意匠されたものか明かでない。奈良時代から盛に用いられ、当時の織物・染物・その他各種工芸品に多く見られる。正倉院の「螺鈿紫檀五弦琵琶」の背面、「玳瑁(たいまい)螺鈿八角箱」「平螺鈿背円鏡」「粉地彩絵箱」などがまず挙げられる。平安時代のもので滋賀県延暦寺の「金銅宝相華文経箱」仁和寺の「蒔絵三十帖冊子箱」にも精巧な宝相華が描かれている。平安時代から時代の進むに従ってこの文様も取り扱い方が違い、唐風から次第に日本調の花文となった。永楽保全の「宝相華文平水指」は奈良時代のものから完全に転化している。[4]