色彩文様研究所

霞文

霞文

御利益天下泰平

絵巻 では遠近感や時の推移を暗示するのに使われる。着物の文様ではぼかしや模様の区切り部分などに応用している。[1]

のたなびいている様子を表した文様。「霞形(かすみがた)」、「霞流し(かすみながし)」とも言う。霞は、空気中に広がった微細な水滴が原因で、空や遠景がぼんやりする現象であるが、霧や煙がある高さにただよって、薄い帯のように見える現象をも言う。絵巻物など大和絵で、時間的経過、場面の転換、空間の奥行などを示すために描かれる雲形を「霞」とも言う。[2]

は天文気象中で陽炎(かげろう)と同じく形のあって無いもので、雲よりもさらに形体化することは難しい。その霞を絵巻物や屏風をはじめ絵画・彫刻・漆器・陶器の類に文様として表現している。この技法は東洋独特のもので霞により遠近感をあらわし、事の変化をはかり、時の推移を示し、煩瑣をのがれ、その間見る者に想像を促している。日本画の霞の表現に槍霞その他があるが、文様には左程様式化されていない。紋章には能役者の喜多氏が「王」の字の中の横線を左右にのばした形を意匠して霞紋としているのは面白い。また「エ」の字を四つ結合したような構成にして「春霞紋」と名付けているものもある。[3]

文様の「霞と桜」
霞と桜
文様の「霞に秋海棠文様肩衣」
霞に秋海棠文様肩衣
厳島神社
文様の「花菱に霞と秋草文様縫箔」
花菱に霞と秋草文様縫箔
鐘紡株式会社

文献等の用例

  • 俳諧・口真似草 – 一「山々はかすみながしの屏風哉<一友>」(1656)

脚注

  1. ^ 『日本・中国の文様事典』視覚デザイン研究所 2000年
  2. ^ 『文様の手帖』小学館 1987年
  3. ^ 岡登貞治『新装普及版 文様の事典』東京堂出版 1989年