色彩文様研究所

四君子文

四君子文

御利益技芸上達 立身出世

東洋画 の画題として好まれる。ウメ(梅)、タケ(竹)、ラン(蘭)、キク(菊)を配した文様。その高潔な姿が君子と呼ぶにふさわしいところから四つを総称して言う。[1]

梅・菊・蘭・竹 を四君子という。梅は寒なれど秀、春来るを率先して報ず。菊は身を軽くし、気を益し、人の寿を延ぶ。蘭は「善人は蘭の如し」王者の香ありといわれる。竹は虚(うつろ)なるに因りて益を受く。などといわれている。中国人の特に好むところのもので、これがわが国に伝って先ず文人墨客に喜ばれたが次第に一般化し、ついに全国民の愛好するものとなった。画題にされると共に文様として様々のものに使われている。京友禅染の「四君子文訪問着」は近年の作であるが、梅を肩と袖一面に細かくあらわし、胸から腰にかけて竹をあらくあしらい、その下に菊をやや斜めに繁く配し、裾に蘭を密に描いている。繁簡・精粗その宜しきを得て伝統を守りながら近代的嗜好を遺憾なく発揮している。[2]

文様の「四君子1」
四君子1

文献等の用例

  • 雑俳・折句大全「四君子を一度に咲す土用干」(1803)
  • 青春<小栗風葉>春・六「古代紫にゴチャゴチャと四君子の縫模様を為(し)た半襟」(1906)
  • 今年竹<里見弴>片輪な子・三「欲ばりだね。そんなに、お前、いろんなものがいちどきにくッつけられるもんぢゃァありゃァしないよ。松竹梅だとか、柳桜だとか、四君子だとか…」(1926)
  • 細雪<谷崎潤一郎>中・二「観世水に四君子の花丸の模様のある山村流の扇をかざして」(1948)
  • 山の音<川端康成>島の夢・一「帯は四君子(シクンシ)ですわ。一年ぢゅうしめられますの」(1954)

脚注

  1. ^ 『文様の手帖』小学館 1987年
  2. ^ 岡登貞治『新装普及版 文様の事典』東京堂出版 1989年